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快適さに関するものが上位を占めている。まさに、現代青年の特質を端的に表す内容となっている。この、青年による青年の家に対する青年のための改善要求を聞いて、至極当然のことと思われるか、贅沢極まりないと立腹されるかは各人の受け取り方によると思うが、少なくとも現代の青年が青年の家に対して不足していると感じている部分を示していることだけは確かであり、このような要求を持っている青年を視野に入れて、我々青年の家の側は施設の整備を行わなければならないということである。当然、早急に対応可能なもの、あるいは対応が必要なものもあり、また、一方では対応の必要を感じないものもあるわけだが、贅沢であると立腹する前に、常に感度の高いアンテナで現代青年の嗜好をキャッチする姿勢が求められることは言うまでもない。

 

?B人的条件
「施設は人なり」とは、あまりにも使い古された言葉だが、この言葉が依然として欠かせないというのは、青少年教育施設に限らず、人間が造るすべての組織にかかわる本質的な事項がここに帰着するからである。施設・設備は金をかければ必ず良いもの、豪華なものはできるが、その中で働く職員が旧態依然とした意識ではせっかくの施設もその機能を十分に生かすことはできない。利用者が施設・設備に感心しても、職員の対応が不適切だと、結局不愉快な思いを残して去って行くことになり、その利用者は決してリピーターとはなり得ない。逆に、臨機応変の対応や、利用者の側に立ったサービス精神、あるいは心の通った接遇などに接すれば、利用者がもう一度来たいと思うのは自然の成り行きである。
施設職員のほとんどが行政や学校等の機関から人事交流で来た者によって構成されており、最初から施設職員としてのプロは当然のことながら皆無に等しい。それゆえ、職員の自己研鎮の努力と計画的な研修の機会は、施設に欠くことのできないものである。また、施設を維持していく人間は事務局のみではない。食堂スタッフ、あるいはボイラー要員も施設を構成する重要な部分である。それゆえ、事務局の職員がいくら頑張っても、別のパートで利用者対応に齪齬をきたすことは、可能性として有り得る事態である。よって、自分の周囲のみならず、職場の別の部分にも気を配る余裕が欲しいところである。
平成8年の11月に『全国青少年教育施設職員ネットワーク・フォーラム』という事業を全青協と国立中央青年の家が共催で実施した。その中で、民間のレジャー産業から招いたある講師は次のような趣旨のことをおっしゃっていた。『…接客のパートにおいては、100−1=99ではない。100−1=0なのである。百人の従業員のうち、一人でもお客様に不愉快な思いをさせると、残りのすべてが悪い評価を受けてしまう。』これは、我々青少年教育施設で働く者すべてが肝に銘じておくべき言葉ではないだろうか。
青年の家の昭和30年代は、誰もが試行錯誤の連続であった。創設期特有の熱気と、高度経済成長のさなかの社会全体の雰囲気の中で、職員は自らが旗振り役として青少年教育の先頭に立っていた。今は社会の成熟とともに、職員の役割も必然的に変化してきている。職員は青年をいかに主役たらしめるかということの助演者の役割が求められている時代である。そのために職員はどうあるべきかを、利用者サイドからのアプローチで考えて欲しい。

 

 

 

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